ビール日記 バドワイザーとカルフォルニアの夜
父親が、近所の酒屋でセールだったというアメリカ産バドワイザーの小瓶を2本、手渡してきた。今夜は私と飲みたいらしい。
飲み友達と路上で小瓶を飲むときは小銭を使って開栓するけど、公務員として定年まで勤め上げた真面目一徹の父にそんな技はなく、行儀良く栓抜きを使った。
普段はコップに注いで飲むのに、珍しく直飲みの父。
「映画みたいでしょ?」
彼の中では、今、私たちはカルフォルニアのハイウェイにいるようだ。
「映画の中なら、カウボーイハット被ってるね」
私もブラッドピッドよろしく眉をしかめながらグイッとビールを喉に流し込む。予想外な強い甘みに、目が覚めた。
口当たりも柔らかく、後味もスッキリしていて飲みやすい。
普段は苦味が強いビールしか飲まないけど、これはイケる。
「甘い!美味しいけど、甘すぎて痛風になりそう」
アメリカのビールは日本のそれと違い、食事代わりになるくらい濃厚なものが多い。ビールが主役級だから、つまみがいらない。
試しにグラスに注いで飲んでみたら、急に味がボケて、口当たりもスッキリしすぎてなんだか物足りなかった。
「グラスで飲むと、おいしくないね」
「そりゃ、そうですよ。これは、直飲みするために作られたビールなんですから」
彼は、知ったかぶりをするとき、敬語になる癖がある。
カルフォルニアの夜は、星屑が燦然と輝いている。私と父は、型落ちのほこりまみれのコルベットに寄りかかり、バドワイザーの小瓶を飲み干した。昼間はうだるほど熱気がこもるのに、陽が落ちると一気に涼しくなるのがこの町の気象の特徴だ。
でも、ここはニセモノの世界だから、空に浮かぶのは金色のペーパームーン。
スッキリ度 ★★★★☆
甘さ ★★★★★
柔らかさ ★★☆☆☆
苦味☆☆☆☆☆
香り★☆☆☆☆
アルコール5%
原産地 アメリカ
瓶から直のみがおススメ。凄く飲みやすいので、ビールが苦手な人はぜひ試してみて。